― conclusion/とある宮廷画家のその後 ―
[ 筆を置くことに決めたのは
もう十年近く前のことだ。
感傷に動かされる歳でもないが
懐かしい日を思い出したのは
同じく懐かしい顔を目前にした
そのせいなのだろうと思う。>>6:27 ]
……珍しい客人もあったものだな。
君が訪ねて来るとわかっていれば、
[ "今は"ただディルドレと名乗る
旅枕を常にする吟遊詩人が
かつて弟子入りを、と、尋ねて来たのは
彼女にまだ姓があった頃の話だ。
そして、自分がまだ無鉄砲で物知らずで
勢いのままに子供を引き取ってしまうような
そんな若造だった頃の話だ。
色褪せないかつての思い出が脳裏をよぎる。
今は後進に道を譲って久しい絵描きは
昔を思い返すようにふっと小さく微笑んだ――。 ]