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[皆からの揉め事や相談事を受ける「村長」、なんて職業をやっていると。
どこそこの家が不仲だとか、ご近所問題の仲裁とか、浮気による離婚だのその後の子供の親権のごたごただので、かなり人間の黒い面を見る機会が多かった。だから、ヴァルターは人間に対して、理想を抱いていない。
自分自身、どうしても、実の弟へのコンプレックスを消せなかった口だ。…たった一人の弟が残した、忘れ形見の姪にどう接したらいいか困って、結局避けて、疎んじて、歩み寄ることが出来なかった、面倒がりで、頑固で、不器用な小者でしかない。
せいぜい村から逃げ出さなかっただけが取り柄だ。面倒がりながらも投げ出さなかったのは、村を出た弟に張り合う為の、意地でしかなかった。]