― 東海上 ―
[ 互いの喉笛を狙う肉食獣同士のように、月下の船上を二つの影が巡る。>>30 ]
金剛石、か、なるほど言い得て妙だな。
[ 男はギデオンの例えに否定は返さず、落ちた血の痕を踏まぬように足を運ぶ様子に小さく口の端を上げる。
そして、投票の理由を問われれば、今度は喉を鳴らして笑った。 ]
生憎と、私は叔父に投票した。
叔父上には、勝利してもらわねば困るからな。
[ だから、カナンにも、自分自身にも投票はしていない、と、口にした言葉は真実だ。
男の瞳には、現在の敵手であるギデオンに向けたよりも、遥かに殺気めいた色が浮かんでいただろうけれど。 ]