―回想/昨夜・パン屋―
[走って来たのかという発言にヤコブが視線を外した。これまた珍しい。
ヤコブの様にスルーしてやる優しさはオットーにはなく「図星だ」と嬉々として指摘する。]
え。
ああ、さっき…、窓硝子に触ってたからじゃないの。
[ヤコブの頬に触れた意味なんて無い。気心知れた相手への戯れに過ぎない。
驚いたヤコブの顔ににやりとして、涼しい顔で指が冷たい理由に答える。何故ヤコブが来るまで窓硝子に触れていたのか、窓の外の何を見ていたのかまでは話す事は無い。
そのまま表情を変えずに一緒に宿屋に向った。]