[南にあるシャスラの町の人間がどうしたかは、魔王の関知するところではない。
クレレットと同じように隣国へ逃げ出したか、あるいはミュスカの森に棲むというエルフの守りを頼みに留まったかは、その地の人間の才気と判断次第だろう。
そのミュスカの森のエルフに対しては、魔王はひとつ手を打っていた。
小煩いエルフどもが横槍を入れてこないよう、送り込んであった双子に命を与えていたのだ。
彼らが森を出る時に残した毒は、今頃エルフどもの聖なる木を侵し、エルフどもをも侵していることだろう。
いずれは森の奥で枯れ果てて滅びゆく運命だ。]