――天子の自室
はぁー…ドキドキするのだぁ。
[ バスタブの中で、ひとりごちる。近侍には聞こえているが、彼らは天子が頭までお湯に潜ってしまわないように、前皇帝の体をブリッジさせるのに必死だ。エリオットは泡の影からこっそりと、水面下の前皇帝を見下ろした。防腐処理が施された、美しい亡骸――
自分と一体である父。若き内に死期を悟り、長くない生涯を独身で通した前皇帝にとって、“ムスコ”と呼べる跡継ぎは自分だけだった。亡き後を務められるようにと、一流の医療と教育が施され、十分な愛情も注がれた。自分もまた、母体である父を愛したが、健全なエリオットが求めるのは別個の異性であり、本物の家族だ。
クリスマスまでに、寄り添い温め合う妻が欲しい。まだ見ぬ妻のことを考えると、謁見の刻のように力が漲る。だが、いざその願望を口にすると、恥ずかしさで熱にあてられてしまった。か弱い天子なのである ]
朕《チン》思うに、可愛いお嫁さん、きっと来るのだな。
だから、しっかりしなくちゃ。
一人で勃…立たなくちゃ。