― 沐浴場 ―[野茨城の1階奥には大きな沐浴場があり、山からの清水を常になみなみと湛えていた。大理石がふんだんに使われた浴槽は大きく、深く、同じ大理石の獅子が吐き出す水はどこまでも澄んでいる。その透明な水の中央に、城主はぷかりと浮かんでいた。陽に当たらないがために肌は青みを帯びている。溶け落ちる寸前の花弁にも似て透けるような肌色ながら力を内に秘めた張りとしなやかさを持ち合わせている。]