[さっき地図をさんざん見たから建物の構造は理解している。
心臓の鼓動を一つにする相手だから、居場所もわかっていた。
───わけでもないが、たぶん浴場の近くだ。
少し近道して外に出る。
靴は結局サンダル履きのままだった。
雪を踏みながら、おそらくは使用人用の通路らしき場所を歩いて板戸を開き、柵の中を覗き込む。
中は池のある庭という作りだったが、池からは湯気が上がっていた。
これがおそらく温泉なのだろう。
今は誰もいないらしい、と周囲を見回す。
この近くにいるとすれば、建物の中だろうか。
今度は温泉の側を横切って歩き出す。*]