─回想、とある少女の話─
[『リデルは働き者だなぁ』
『そうだ、こ褒美として綺麗な服を着られる所に連れてってやる』
なんて言葉と共に売られてからだいぶ過ぎた頃、女はフリーデルという名前ではなく『リーディア』という名前で世間からも認知されていた]
[少しばかり言葉は辛辣で、それでも相手の心をくすぐる事を忘れない。少女らしい女として、割と客の評判は良かった。
とある客に肩を抱かれ、その客の屋敷に招かれた時の事。
自分とそう年の変わらない、礼服を纏った少年と出会った事がある。
聖職者の道を歩んでいるのにも関わらず、随分と自由奔放な少年であった。
噂として耳にした事のあるその悪名高い少年こそ、現在のジムゾン・フォーゲルシュタインであった]
[その聖職者と思えぬ奔放さに興味を惹かれ、少女はその邂逅以来、街でその姿を見れば気安く彼に声をかけただろう]
[招かれた屋敷でジムゾン少年は確か、悪魔祓いめいた事をしていたなと、記憶を揺り起こしながら女は思い出す。
もっとも、この村での派遣はそれとは関係ないと女は信じていた。
いわゆる、平和ぼけである*]