[――青年には、過去の記憶がない。
正確には、8歳より前の記憶。
15年前、4つの星が落ちた夜。
焼けた村の中で気を失って倒れていた所を、知らぬ男――のちに義父となる男に揺り起こされ、何があったのかと尋ねられても、 8歳の自分は、名前と年齢以外は何も覚えていなかった。家族も、村にいただろう他の者のことも。村のあったその場所にいた生存者は、たった一人だけだった。
4つの星のうち、ひとつが落ちた方角に自分のの村があったとは、後から知ったこと。青年は、妖星が堕ちた後に滅んだこの村と、自分がいた村に何らかの関連があるのかもしれない、と考えた。単に火事や事故だったのかもしれないが、そうではない気がしていた。根拠はないが。
あの夜の真実を知れば、失われた自分の過去が取り戻せるかもしれない――と15年経った今でも考えるのだ。]