…それに、この任務が終われば、姫様でもなくなりますから。
[沈んだトーンで、寂しげに呟いた。
…右手の薬指で存在を主張するのは、名も顏も知らない男からの贈り物。
領主である父が取り決めた、婚約者からの誓いの印だ。]
……女の幸せ、って、何なのでしょうね。
[先の、自身が目覚め従者と出会うきっかけとなった襲撃で妻を亡くしてからというもの、娘に対して過保護になった父は、以前からとある貴族への嫁入りを薦めていた。
数年前、父の後妻となった女性の遠い親戚でもあるという。
義母は優しくしてくれてはいるが、やはり自身の活動については苦々しく思っているようだ。
意固地になって続けていたが―これ以上の抵抗は、父との亀裂を生んでしまうだろう、と。
了承したのが、数日前。]