[ 喋るなと言われて>>32
さも不愉快だとばかりの反応をされて、
悦ばしいと獣が感じないはずがない。 ]
君の言葉を僕が素直に聞くとでも?
虫唾が走るって?ふふ…いいじゃないか――…
君と"僕"は。ずっと口でこうして喧嘩 をしてきただ ろ
[ 彼が顔を顰めるならば、
鈍く光を放つ獣の牙の間からは笑い声が漏れる。
獣とも人ともつかない歪な音色の"聲"は聞くものを
更なる不快な気分に陥れたかもしれないがそれは、それ。
駆け出せば、彼の左前腕を狙うように飛びかかる。
刀が力尽くで振り下ろされたとしても避けはしない。
身を焦がすような本能の欲求に従うだけで心地が良かった。
脚の一本くらいくれてやっても構わない。
人間ならば誰だって構わない、求めている
[ 刃が振り下ろされる下に飛び込めば、骨と刃がぶつかるような
嫌な音と、右の前脚が叩き折られるような衝撃と苦痛が過ぎて。
あまりの痛みに呻き声が漏れるが、目の前にある人間の
体の其処彼処から漏れる傷の匂いが狼の動きを止めない。
そのまま鈍く光る牙で彼の腕を貫こうと顎門を開けて狙ってから
攻撃が当たっても当たらなくても、一度後ろに下がろうと試みる。 ]