―サシャ個室―
[先ほどの己の声を聞きつけて、既に駆けだした者があったかどうか>>33
とにかく、今はサシャの姿しか目に入らない──いや、サシャだった“物”しか。
しかしそれは血染めのシーツに包まれていたため
(まだ変色は僅かしか始まっていなかったのだろう)
薄明りの中では深紅のドレスを纏って寝ているいるようにも見えて。
ローゼンハイムの殺し方とはどこか違う、そんな思いがふっと頭を過ったのは一瞬のこと]
俺が…!俺が……!!!寝ていなければ!!!
[寝台に近づき、一縷の望みをかけ、脈をとろうとするも
真白な腕は既に体から離れていた>>25]
……っ!
[それから、サシャの蒼白な顔を見下ろす。
……まるで硫化してしまった銀のような
黒薔薇の花びらがひとつ、サシャの髪を飾っていた>>25]