―2日目・AM9:30・第五訓練場―
[相手>>32が口元を隠そうとすればすっと手を引き、その様子を観察する。予想通り、魔力での干渉なら味を感じられるらしい。
他の人にも同様の施しをしているのだろうという予測を聞くと、僅かに首を傾げた。
確かに、己にとってこの花を分け与える行為はそれほど特別なものではない。湯水のように使うことはないが必要があれば使う。その程度のもの。
こくりと頷いて相手の言葉を肯定すれば、素直にそのことを伝えて]
お礼や交渉材料としてこの花を使うことなら、たしかにあるよ。
それに、シェーンベルク家の軍人はいつも緊急時の魔力供給源として使われるから、僕もいざとなればこの花を皆に配る。
でも、それは不快だって感じの言い方をするんだね。
[一歩、相手の方へと踏み出す。
――ああ、やめておけばいいのに。
自分が相手の痛みに触れようとするのも、らしくない綺麗事を紡ぐのも、道を示すのも、親切心や慈悲によるものではない。素顔が見たいという、ただその一心。
近くに第三者>>28が居るのには気が付いていた。もう近くには居ないようだが、相手以外には聞こえない程度に囁いた]