― 書斎 ―
[家具のどれかが軋むような音>>11に混じって、自分がそう考えたのだと思い込んでしまいそうなほどに微かな声が聞こえたような気がする]
あらそう?
そうね、なんというか、花より団子な一面があったかも、恋愛ものならブロンテ、青春ものならヘミングウェイってところかしら?
私はカポーティだって好きなのだけれど。
[面影を思い出そうとして、浮かんできたのは<<ゴーストバスター(志望) リーゼロッテ>>の顔。頭を振ってそれを追い出すと]
どうしてでしょうね、あなたとしたことは思い出せるのに、あなた自身が思い出せない。
[ずらりと並んだ本の群れから、アンデルセンとエンデをやや苦労して抜き出した]
この場所で、一緒にお話を作ったよね。
額を突き合せて、お互いのストーリーをああだこうだって批評し合ってたっけ。
[呟きながら背をなぞっていた右手の人差し指が、『月と六ペンス』の上でぴたりと止まる。
なんだか暗示めいたその発見に苦笑いを残して本棚を離れ、机に先程抜き出した2冊を広げて読み始めた]**