[アルビンに宣言した通り、香辛料を使ったスパイシーなパンを作ろうかとも思ったけれども、自信がなさすぎたから止めた。そも従業員部屋の惨劇を知った直後に普段と違うパンを食べる気になれる人がいるかどうかも疑問だったし。
そこで定番のパンを宿に残っている人数分―無論ゲルトの分も―焼く。
ゲルトを発見したときになるべく自然に振舞うべく、深夜のことを意図的に頭から追い出そうとしていると、不思議と昔のことを思い出した。
アルビンと木登りするときは、自分に張り合っていた覚えがある>>1:302。
負けたときは素直に凄いねと賞賛し、こちらが勝ちそうになってアルビンが途中で止めても、やりたくなくなったのならしょうがないねと許していた。
雪合戦のときも雪玉を頭に投げられたが、洗濯が大変だから服が濡れるよりましかと考えていた。
そんなところや、モーリッツの話を真面目に聞いていた自分は他の子供からどう見えていたのだろうと今頃気になっている。今も普通の人とはずれている自覚はあるから。
遊ぶときはヨアヒムも誘っていた。ヨアヒムが参加したら、アルビンと同じように接していただろう。]