[ナサニエルが躍起になる理由は聞き知っていた。 ── 右腕と恃む参謀が魔族との戦いで失われたのだと。憧れの人の参謀になれた歓びを表すことの躊躇われる事情であったし、頑になっているナサニエルからは、あの日の痺れるようなオーラは感じられなかった。煌めくばかりの存在感は認める。 けれど、違う。思い出を美化していたのかもしれぬ。あるいは ── 、と別の考えが過ることもあったが、たとえ真実が何処にあろうと、今は、忠実に務めを果たすことだけを考えるべきだ。]