[鍵と呼んだ男の腹部から躊躇なく黒刃のダガーを引き抜くと同時、振られた刃を避けるべく後ろに跳ぶ。
再度男を襲撃することなく、他にもっと大事なことがあるとでもいうように背を向ける。
鮮血の滴る刃を持ったまま、洞窟内の結晶へと振りかけてまわった。]
……現世に三大世界あり、現、妖、精の三つ也。
その理の外に封じられし闇に、我は呼びかける。
[キンッ――― その度に、ひとつひとつ結晶が微塵に砕け散ってゆく。]
魔獣よ、妖魔よ、名もなき異形よ、
命なくて生きるもの、存在する無よ。
今一度王との旧き盟約を果たせ。
[刃から滴る最後の一滴、赤を受けた、最後の結晶が砕け散る。]
今や鍵は解かれ、現への扉は開かれた。
永き眠りから目覚めたまえ、―――我らが王よ!
[巨岩に刺さっていた剣が、低い振動音を立てながら抜けて行き、今や岩には無数のひびが走っていた。]