―パン屋―
ありがとうございました。
…海辺で死体?はぁ、物騒ですね。
[男の反応が思ったより薄かったためか、一大ニュースとばかりに興奮していた客の顔は、たちまち苦笑いに代わる。
内心では十分驚いているのだが、表情にまでは伝わらない。
軽くお辞儀をして客を見送り。
人波が途絶え、ぽっかりと空いた時間は、新作のパンの構想を練り始めた。
しばらくして空気を入れ替えようと窓を開けて、軽く顔を顰めると、すんすん鼻をならす。]
嫌な空気だ。
嵐にならなければいいけれど。
[天候や湿気によって、パンの出来栄えは大きく変わる。
さすがに雨などには対処できるようになったが。]
嵐のパンの機嫌は…どうも読めない。
[小さくため息を付くと、窓を閉めた。]