……そんな理由で拒絶はしても、天使は天界には戻らなかった。
いや、戻れなかった、というべきかな。
自分の降臨が望まれた理由──中枢として限界まできて、それでも世界を護りたい、支えたいと願うメディウスを、見捨てる事ができなかった。
結果として、天使はメディウスの願いに応える選択をして……代わりに、天界の干渉の全てを退けさせた。
そして、願いに応えるために──人であるメディウスと融合し、人でも天使でもない……『何者でもないもの』として生まれ変わった。
……それがぼく、というわけだね。
[滅多に語る事のない己が存在の来歴を語る口調は、僅かに苦味を帯びたもの]
この在り方となってすぐ、ぼくは天界と盟を交わし、以降の干渉を制限する事を互いに定めた。
ぼくが神子としてここに立つ限り、それが覆される事はなく……永劫存在であるぼくが消滅するのは、それこそ世界の終焉だから。
干渉がなされる事は、あり得ない、と言えるんだ。