― カレンの街 ―
[魔軍の撤退命令が出た後も、カレンの屍鬼たちは猛威を振るった。
夜でもあり、しっかり戸を閉ざしている家が多かっただろうから、実際の被害はそこまで大きくはないだろう。
だが港の消火活動に当たっていた民が巻き込まれ、街には投げ込まれた屍鬼や、感染して増えたものが徘徊している。
街の中が直接襲われ、知人が目の前で怪物になったことは、被害以上の恐怖を植え付けていた。
民がおびえ縮こまる家々の間を、美しい歌声が通り抜けていく。>>30
その歌声は光を呼び、屍鬼を退けた。
なによりも、恐怖に砕かれた人々の心に染みこんでいく。
この夜、カレンが崩壊を免れたのは、なによりも彼女の歌声あってのことだったろう。]