[見えない何かへ伸ばしていた腕は、今は口許を覆う為に使われていた。
血は靴だけではなく、履き慣れたズボンの裾まで。
穏やかな挨拶を交わしたばかりだった友達>>24
彼女が声を上げても>>26来ていることすら分からない。
飛び込んできた誰かに名前を呼ばれた時>>23すらもそう。
すぐ隣の蹴破るような音なんて、大きく届いた筈なのに。>>30]
ああ、あああ……!
戻さなきゃそうだよ戻してあげなきゃ
全部、全部直したら、戻って来るの!
[虚ろな目は涙を流しながら、無残な姿に固定されている
叫びの合間のうわ言は、他者に理解は難しいもの。
凍えたように震え、今にも崩れ落ちそうだった身体を
何度も名前を呼ぶ>>28彼が後ろから抱き締めた。
その行為により、なんとか立っている。]