― 回想/10年前・火山地帯 ―[グリュングレースから山越えの道を進んだ先の、国境付近。 やや道を外れた場所にある湧き水の畔に、黒髪の人影があった] ――ちょっと、切りすぎたかなぁ。[そう呟くリュカの視線の先には、湧き水の溜まりに映った自身の顔があった。 短く切られた黒髪は、長さが不揃いな上に左右のバランスも悪く、如何にも素人が慣れない鋏で切った風であった] ま、でもこれなら、まず女とは思われないだろ。[最大の目的は達したというように頷いた後]