[開いた傘の黒い張り布を抜けた刃の数はそのまま痛みの数とはならない。
掠り傷が二三本と左の上腕にぷすりと刺さる痛みが一本。
あと>>28は外れたらしく、クマの標本となることは免れた――が。]
このナイフは婦女子が持つにしては磨かれ過ぎているのでは…!?
[神経まで傷ついてはいないのだろうが、びりりと皮膚が痺れるような鈍い痛みは決して浅くはないのだと自覚するに容易い。
下手に動けば傷が広がりそうな刺傷だけれど、樹上と樹の下。
傘による刺突が易い距離を鑑みれば、腕の傷が傷んでも追い打ちをかけるべきだろうかと脳内クマ会議が行われたのは数秒で。]
これほど悪戯が過ぎるとお仕置き程度で
『はい、よろしい』と
済ませるわけにはいかんでござるなあ。
[果たして傘を閉じて持ち直すまで待っていてくれたやら。
痛みの滲む左腕は使わずに、右の腕でお嬢さんの脚に常より鋭い傘の先端を刺してしまおうかとぶすりと突き上げてみれば。]
クマが下等生物かどうか――身体で試してみるといいでござる。
[あくまでのんびりとした口調でそんなことを言った。//]