─ スミ湖畔・材木集積所 ─
これとこれとこれだな。
おっしゃぁ。
とっとと運べ―。
[びりびりと湖畔を揺らして大声が響く。
周囲の大工たちは聞きなれた様子で『へーい』と答え、水から揚げた丸太を荷駄に積んでいくが、材木商の男は半分がた耳を塞ぎながら愛想笑いしていた。]
さすがに良い木だった。
んじゃまた、次もよろしくな。
[そんな材木商の手を引き剥がすようにしてがっしりと握手したこの男こそ、マイヤー工房の主、棟梁ゲオルグであった。
聖地セーファの東の跳ね橋修繕用にと、みずから材木を買い付けに来たところである。
跳ね橋も壊れているわけではないが、何しろ歴史のあるものだ。
時折具合を見てやらないと万が一ということもある。]