― 訓練所 ―
[扉を開けると的が割れる音がした。>>30
探していた後姿を見つけてゆっくりと歩み寄りつつ
射撃動作の隙間を見て声をかける。]
いい腕前ね。
[ここでカシムと出会った事はなかったため
昨日までの腕前を知らないまま誉め言葉を口にした。
記録官であるドロシーがここにいる理由を訊ねられたなら
カシムを探していたと言うだろう。]
サシャの事は、聞いている?
[表情がよく見えるよう、正面に向き合った。
カシムからサシャの相談を受けていたから知っている。
どれだけ彼女を慮っていたのかを。
だからカシムには話しておきたかった。]
彼女は私の代わりに疑われて死んだの。
あの夜少将といたのは私。
[さすがに私が犯人ですとは言い切れずに
迂遠な言い回しになったけれど、意味は伝わる事だろうか。*]