[手の中にあったカフスを見下ろす。
軍に属してから知る父の名の重みは時に俺を優位にしてくれたし、それ以上に反感や必要以上の期待というものを俺に投げて寄越してくれた。
父の息子という情は与えられても、俺自身に与えられる情とは縁が遠くなってから久しい。
手の中にあるカフスの主から与えられた友情は、久しぶりに与えられた『俺自身』への情だと思っていたのだが──……]
[『もう戻らないから、心臓の近くにあったものを代わりに』
ずっと忘れる事の出来ない最後に告げられた言葉を口の中で呟いて、俺はそっと友人だった人のカフスを懐にしまいこんだ]