[この闇の底に在りて、こうも煌々と輝くのは彼ら天の使いくらいであろう。空に浮いた天球は、暖かさを知らぬ冷たい真円。
開いた扉の先に拡がるのは、人の営みを切り取ったかのような居住空間で在った。月明かりを透かす薄衣に仕切られた天蓋の寝台。
皺ひとつない純白の布に覆われた其れは、蒼闇の中で光沢を放つ。]
―――…君の緊張を感じるな。
怖れに竦むことは怯懦ではない。
堕落は心地が良いぞ、君の全てを赦してくれる。
[天に背いて唇を濡らした卑俗も、彼の中で芽吹く未熟な感覚も。
天使を攫った魔族が、どのように天使を使うか。
天界へ戻った同胞がいないのであれば、彼は仔細を知るまい。
例え、人の寝所を模した場所で、薄暗い夜に、連想される卑猥があったとしても。>>16]