……しかし、そのような文書。
王の判が押されているとして、本物かどうか分からないじゃない。
偽装しようと思えばいくらでもできるでしょう?
だって、陛下はもう亡くなったのだから。
[声を高らかに上げるようなことはしない。
思わず独り言が漏れた、という程度に留めておく。しかし、わたしの傍に居た同僚や軍属たちは、その声を拾うと得心したのか、次々とうなずいて同意を示し始めた。
口々に”その文書は偽物だ!”と騒ぎ立てる。
おそらく、フェリクス王子がその場を収めるまで、喧噪は広がるのかもしれない。
疑念は瞬く間に広がっていく。
まるで、水面に投じた一石が、大きな渦を生み、巻くように。*]