――くぁ。[その店主――アレクシス・フォン・ベルンシュタインは、窓際で開いていた本を閉じ、何とも間抜けな声と共に大きな欠伸を零した。木製の安楽椅子が小さな悲鳴をあげる。それを気にした様子もなく立ち上がると、本棚へと書物を仕舞い、ゆっくりと伸びをした。ばきぼきと骨を鳴らす姿からは、古くから続く家の威厳など欠片も見えない。] 散歩にでも行きますか。[欠伸のせいで滲んだ涙を拭い、眼鏡の蔓を押し上げると、革靴の音を響かせて部屋を後にした。]