ォオオオオオオオ
[大地を揺るがさんばかりに咆哮が木霊する。
その時にはもうう女の姿はここにはなかった。
花盛のパメラは夢の中へと消えた。
あるのは、大地に模すが如き涅の色の狼。
流れるようなしなやかな体躯で地に立ち天に吠ゆる狼の姿。
その眸は地上の星が如き燦然と、そして烈々と煌めく紅蓮を宿す。
己が存在を世界に刻むように叫んだ狼は、次の瞬間には風になる。
大地の風となって翔び駆けて、花盛の夢に迷い込んだ者へ突進する。
その尾に括りつけられた人の帽子をはためかせ。
刹那の間を駆け征きて、神父へと襲いかかれば禍々しく開かれた口元を見せた。
鈍く光る獣の刃が、彼の喉元へと食いこんで、首をぶんと振る。
飛び散った鮮血と肉塊が弧を描き、無慈悲に夢が終わりを告げた。
ただ一人、花盛の夢に住まい、今その夢から覚めようとする者を除いて、夢の刻は止まったのだ。]