――逃げた、ところで…、[そう、逃げたところで残りの面々の中に本当にオオカミさんがいるとするのなら、無意味なのだ。どうする事が最良なのか――考えながら歩んでいると、笛の音に鼓膜を擽られた。導かれるように沢へと近づき、奏者の背に気づく。カスパルの少し後ろを陣取って、川のせせらぎと笛の音のセッションへと耳を澄ませた。仄かな哀愁さえ感じる繊細な笛の音色。曲が途切れた後、ずっと考えていたひとつの疑問をカスパルへと投げ掛けた]