― 回想:未来の皇帝陛下 ―
[光すらまばらな海のしろの中で歌い続けて、いくばくか。
いまはもうわたしは、どこかへ連れて行かれるほどのかちもない狂人でした。いいえ、わたしは自分が狂っているなどと一瞬たりとも思ったことはありませんでした。
けれども、部屋と外の世界をへだてる柵のむこうから昼夜問わずに声が聞こえるのです。
誰のものかもわからない声が。
わたしを哀れみ、かわいそうと噂し>>4、蔑む声が。声が。]
[狂ったことはありません。わたしは何時だって自分自身であったつもりでした。けれども、嗚呼。
狂人は、たいてい自分のことをそう言うものだそうです。]
[止めろと投げられた言葉と、砕け散った人型のかけら>>3がわたしをきずつけたとき、わたしは思いました。
もはや、わたしは、完全に人間でなくなったのだと。
蔑まれ、哀れみの視線をむけられる。檻の中の動物にもにた、]