[一人の軍人が、広間へと駆け込んでくる。北の要塞ゾネスが襲撃を受けている。その報に広間が騒めいた。それらを打ち消すかのように、兄の哄笑が響く。>>23兄へ信じられないものを見るかの目を向ける者は、文官のみならず軍人の中にもあっただろう。その中に、先の騒動の折に王宮を守った大将>>3:182がある。生真面目な軍人である彼の顔も青ざめて、凝然と第一王子を見つめている。だが、その表情がゾネス急襲の報に動いた。指揮権を求めて彷徨った視線が、第二王子のそれと交わった。]