「聞いたか、レオヴィルの…」 「善戦 …らしい」 「殿下が」 「王弟殿下 …」 「セミ …川」 「勝 、と」[ひそひそと交わされる噂。真偽もわからない、水底に沈みながら掴む藁のような話。けれどまだ、精強な軍と質実剛健、不撓不屈の精神で知られたモンテリーの民は、恐ろしく暗い闇の中で微かほどにも見えない希望を、忘れ捨ててはいなかった。やがて西広場に、名もなき誰かの断末魔の叫びと血臭が迸った]**