─ 昨夜・宿のレストラン ─
[食事中、ぎこちなくなった空気を裂くように、カレルがユーリエに声を掛ける。渡していたのは、「花言葉の本」だった。カレルらしいチョイスだと思った。
二人の会話を聞いていたが「結婚式」という言葉に、思わずむせる。]
な……
[驚いてカレルを見てから、ユーリエの方を向く。顔が赤い。自分も同じように赤くなっているのだろうと思った。当の本人は、それじゃあと次のテーブルへ移動している。]
驚いた、な……
[やっと出せた言葉が、その一言だった。
そうしてまた、少しの沈黙の後ユーリエと見つめ合い、どちらからともなく、ふっと笑い出したのだった。]