[天を駆けて、目指す先に迷いはない。 己の視線の先には、王の背があった。 自身は魔の王に侍ることを至上とする獣。 世界に揺蕩う魔力の揺らぎから生じた獣が最初に覚えた感情は嘆きであった。 侍るべき王は玉座を空けており、彼が眠る地を求めて幾年月。 覚醒に至るまでの眠りを守って更に幾年月。 『貴方には王の資質がある。 貴方をずっとお待ちしておりました。我が王。』 我が世の春の始まりは、王の目覚めにそう告げた折。>>19 彼の復活を、粛々と傅いて迎えたあの時より。]