― 魔界温泉郷 ―
…あれ。
[街中を歩いていた筈なのに、いつの間にか風景が変わっている。白いごつごつした岩を靴の裏に感じ]
おかしいな…魔界って方向感覚とか、距離感とか、狂うんでしょうか。
[自分が方向音痴、という可能性には蓋をして。白い煙や黒い煙をあげる岩の間を歩く。時折思わぬ近さでいきなり湯が吹き上がり、慌てて飛びのいたりして]
……。白いのはともかく、黒いお湯には、入りたくないですね…
[そんな呑気なつぶやき。汗を流したくないわけではないが、元から身を守る術すら知らぬ身。服までなくしては歩き回ることすらできぬ訳で。
犬を抱えてうろうろしている姿は、無防備とみえるだろう]