― 回想 ―
兎というのは幸運を運ぶという話を聞く。
さて、君はお兄さんに幸運を運んだ。だが必ずしも幸運だけではない。
[ちょうど十年ほど前のころ、灰の降るこの地域にて、一人の少年を助けた。
...自身は火ネズミの魔物に用事があったのだ。具体的にはその皮をつかった外套を作りたかったというのがあったがそれはともかく]
しかし助けてしまった以上はめんどうをみないといけない。
もちろんそれは君に寄る辺がなければであり、それを拒否する自由意志を与えないほどお兄さんも狭量ではない。
[見下ろしたあまり旅慣れているとは思えない少年に、いちいち説明っぽい言葉をかける]
というわけでだ、お兄さんはこの獲物をもって近くの街までいかなければならない。
ひとまずはそこまで一緒にくるかどうかだけきこうか。コニーリオ
[コニーリオと、兎の意味する名称で少年を呼びながら火ネズミの内臓や不要物だけを焼いてしまい、ゆこうかと声をかけて、思ったより長い付き合いとなった少年との出会いであった。]