[船の汽笛が聞こえ、>>25
硝子越しにも聞こえた声に思わず足を止めた。
タラップを降りたばかりの場所で声を張り上げる姿が
自ずと視界に入り込む。
可愛らしい子だ。
緑色の瞳には、期待と不安が入り混じっていて、
まるでこれから冒険に出かけるかのよう。]
――サシャ、
[反復した名前はやけに馴染んだ。
瞬いた拍子に水が頬を一滴流れて、不思議に思う。
潮で目が乾いたのだろうか。
距離からして普通の人はドロシーの存在に気付かないだろう。
だけどなぜだかその場にいられなくなって
足早にその場を離れるのだった。]