[帽子を決して離れぬように自らの髪に括りつけ、愛おしげに彼を見つめる] 征こう…貴方の憧れた世界を 森の世界を魅に──[そして最期に彼の唇に自らの唇を重ね、滴り落ちた彼の血をそっと舌ですくい取った。唾液に混ざり五臓六腑を満たしていく彼の血望みながら抗って、最後の一歩を踏みとどめていた禁断の果実。彼が満ちていく。私の中へと満ちていく。巡る想いが満ち満ちて、私の頭上には姿なき月が登っていく──嗚呼月が綺麗だ。貴方と見上げる最期の月が私が見上げる最期の月が]