―2日目・AM9:30・第五訓練場―
え? ああ、だからあの草も食べられたんだ。
[味を感じないと聞けば少し驚いた様子で目を丸くした。成程、味覚が失われているのなら平然と野草を食べていたのにも合点がいく。
手が押される感覚に抗いはせず、大人しく腕を下げる……が、その手で先程食べていた砂糖漬けの花弁を取り出せば、相手の口元へと運んで]
これ、僕の魔力で作った花。
自分では何も味がしないから砂糖漬けにしてるけど、君が食べれば甘く感じるはずだよ。
[この花を食べて生じる甘さは舌の機能によるものではない。己の魔力が溶け込む際に生じる副作用のようなもので、どちらかといえば幻覚に近いものだ。それでも確かに甘みを感じられることだろう。
口を開けて、と、指の背で相手の唇を軽くつつく]