けれどラメールは、王の統治する国だ。
王が権を握り、統治して国の行く末を導く国だ。
だからこそ、明確な王の命は実行されねばならぬ。
王の命を蔑ろにすることは権を蔑ろにすること、それは即ち国の乱れを導くもの。
だからこそ文書が真であり父上の御心が私の上にあったなら、私は兄に譲らず、この国の王と成ろう。
私には、国と国の民とを守る義務がある。
その義務を果たすため、…貴方たちの力添えを嬉しく思う。
[彼の、彼らの心のうち全てを知るわけではない。言いたくないこと、言えないこと。そんなこともあるだろう。
けれど一つだけ、彼らは間違いなく国を思うものと…──少なくとも、今ここに言葉交わす年若き監査局長がそうあることを、ウェルシュは信じていた。忠誠には信義を。威ではなく和を。それがウェルシュの選ぶ道だから。]