― サクソー川/橋の西→ ―
[ 駆け抜けようとする騎馬小隊を、弓騎兵は見逃しはしなかったろう。
狙いを絞られれば、避けきれず転倒した馬から落ちた者、鎧で庇えぬ場所に弓を受けて、倒れた者もあったか ]
ちっ!揃いも揃って、いい目をしてやがる。
[ 恐らく彼等の大半も軍人ではない、まるで集団で狩りをするかのように、蛇行する馬の行く手を個々に予想し、自然に息を合わせるかの如き斉射は、訓練された弓兵より、余程脅威に思われた ]
無理はするな!逃げ切れなければ退け!
[ 背後の部下に向けて声を張り上げながら、それでも先頭を走る自身は、その馬足を緩める事は無い。
鎧は身に着けていたが、視界を確保するために兜は被らずにいるその首筋を、矢の一本が、掠めた ]
く...は...!あ、ぶねえな...。
[ 傷を確かめる暇はない、ただ痛みの度合いと首から背へと流れる血の感触で、掠り傷と判断して、そのまま駆ける ]