[いくつもの記憶。
オルヴァルの戦の記録は、悪い思い出も多い。
だが、同時に忘れられない思い出も多く。
楽しかったと思えるものすら、あった。
例えば、の、ひとつ。
ゲオルグと酒を酌み交わした事があった。
オルヴァル軍の青年――確か、ローとか名乗っていた筈だ。
あと、タクマ。
自分とは違う世界のような、それでいて今は同じ世界のような。
一枚絵のように、そんな彼らの姿が記憶の風景に残っている。
目を閉じれば簡単に思い浮かべられる。
もっとも、その絵の最後に付け加えられるのは、酔ったタクマの鼻歌であり――あれは思い出してもちょっとした悪夢だったりする。]*