[けれど次の瞬間には、先ほどの顔は何処へやら。
にやり口角を吊り上げて、下種た笑みを浮かべよう。]
ああ、そういえば。
貴殿には年頃の娘さんがいらっしゃるそうで。
噂によればとても気立ての良い美人だとか。
……くくく、そう怖い顔をなさらないで下さい。
貴殿の身にもしもがあれば、彼女も悲しむことでしょう……と、申し上げようとしただけですよ。
[敢えて勘違いさせるような物言いをしたのは事実。
無論、僕にそんは気はない。
僕は既婚者で、今も昔も妻一筋なのだから。]
さて、そろそろ答えを聞かせて頂きましょう。
僕の口を塞ぐために、貴殿に何が出来ますか?
追い詰められた貴殿は、何を差し出して僕に助けを乞いますか――?