[ウェルシュ・ストンプは、つい昨年領主に就任したばかりの若頭であった。
ストンプと言えば、ウルケル随一の造船所を有する港街。他にも兵器工廠や修理工廠などがあり、数十年で急激に発展してきた工業都市であった。丁度、ウェルシュの父親に当たる、前領主がストンプを大きくしたのだ。
ウェルシュは物心ついたときから船ができあがる様を眺め、育ってきた。]
将来は船の設計士になる!
[そんなことを幼い頃から口癖のように言っていた、と。
ウェルシュをよく知る者は、彼のことをそう語る。]
[しかしその夢は――――叶う事はない。
ウェルシュ・ストンプ。
誰もが知っている、ストンプの坊ちゃん。
実は彼には腹違いの兄弟が居るのだが―――…それはまた別のお話。
とにかく、正嫡男はウェルシュただ一人。
産まれた頃から領主になることを宿命付けられたウェルシュに、その願いを果たすことは不可能だったのだ。]