― 14年前 ―
[ 猛将として知られたターリス・ガーウィンが死去し、その家督をまだ12歳の少年が継いだと聞かされた時、彼の胸に涌き起こったのは言い様の無い痛みだった。
宰相が主君であるラモーラル候を弑し、王国に恭順を誓ったことで、ラモーラルが王国によって滅ぼされる事は避けられた。
だが、そのために払われた犠牲はあまりにも大きい ]
君がツェーザル・ガーウィンか。
[ たまたま辺境伯の元を尋ねた時、オクタヴィアスによってターリス・ガーウィンの息子を紹介されたのは、彼が相続の挨拶に上がって一週間もした頃だろうか。恐らくオクタヴィアスの希望に添ったと思われる、微妙な愛称呼びで、少し照れ臭そうに、けれどどこか嬉しげに主君の息子を呼ぶ、その様子に、何故かひどく安堵したのを覚えている ]