[ 「無駄だから」 と思っていた頃には、何にも見えていなかったし聞こえていなかった。 何も伝えようと思っていなかった。 でも、世界はこんなにユーリエに語りかけてきていた。 色は鮮やかで、音は華やかで、匂いは複雑だった。 魔物だとか、夜の城だとはそんなことは関係ない。 世界の全ては必要で、 世界の全てに愛があった。 こんなこと知らなかった。 すぐ傍にあるのに、どうして気づこうとしなかったのだろう。 後悔と感動の混ざった涙が、ほろりとこぼれては、床で弾けた。 ]