[そのまま、一歩分を今度は此方が下がると、少なかって口数は一変して、饒舌を見せる。
けれど、それは酷く抽象的で、理解させようとはしていないようでもあった。]
止まる木を失ったなら、鳥は去るさ。
それでも、場所さえあればまた。
風や雲の向こうからでも、止まりに来る。
あぁ、きっと願っていよう。
未だ見ぬ桃源郷の、ある事を。
重いなどという事はない。
ただ唯一、重いのは
だから、その想いごと連れて行こう。
[そうして一言、俺は彼女に囁くと、踵を返して歩いていく。
絵を持たない左手を、ひら、一度振って建物の影に入るよう。]*